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「アンダーカバー」2015年春夏パリ かじり取られた真っ赤なチェリーが意味するも

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ランウェイには人の背の高さほどある大きくて真っ赤なチェリーの置き物が並べられた。可愛らしいが、顔が彫られたり、部分的にかじり取られたりしていてシュール。それはまさに「アンダーカバー(UNDER COVER)」のダーク・ファンタジーの世界。「無垢から狂気へ」。デザイナーの高橋盾があげた今シーズンのキーワードだ。
 冒頭はピュアな白鳥のシーン。パステルカラーのチュールやシフォンを使ったチュチュのような甘いドレスは、白襟ならぬ黒襟をつけてピュアな中に一さじの毒を加えている。基本は短い丈のトップスと、ボリューミーなボトムスで作るフィット&フレアでガーリーに。ただし、コッパー色のサイクリングパンツなど、スポーツアイテムを絡めることでカワイイだけでは終わらせない。
 キーモチーフは鳥。ブラトップも鳥の羽根で覆い、ファンタジックだ。コートやバッグは透明なPVCのポケットにiPadミニを仕込み、鳥が羽ばたく映像を流している。

 後半に向けて、白鳥が黒鳥へ姿を変えるように、黒や赤を多用し強さを増していく。一遍の物語を紡ぐようなショーの展開は、観る者を「アンダーカバー」のダーク・ファンタジーの世界へと引き込んでいく。

 ボディペインティングのように全身に飾ったアクセサリーは、「アンブッシュ」のデザイナー、ユンが手がけたもの。彼女がデッサンから起こした花もまた、ピンクで可愛らしいが近くで見ると食虫植物のようで少しグロテスクだ。